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「おい、ビールをくれ」と、しやがれた低い声で云ふと、土間の安テーブルの前に腰を下した。
男は眼を閉ぢたまゝだつた。
「すると、何ですか、十年契約といふやうなことにでもなすつたんですか」
と、小谷は目を丸くした。欲しさうだつた。すると、逸早く、
と、今泉は一寸声をひそめた。
「どうして?血はつゞいていなくてもこゝの家とは親類ぢやありませんか」
「へえ、どういふわけでせう」
「おぢいさん、そんなに立つてばかりいないで腰をかけなさいよ」
徳次は一種くさめをする前のやうな、煙けむたげな表情になりながらわき見をしたり、房一を眺めたり、どぎまぎして答へた。
「さうかね、梨地へ行くんなら、やつぱりこゝを渡つた方が近道だ。井出下の渡しはもうないからね」
生返事をしてそのまゝ登つて行く。
「これですか――?」
そこには、房一の紅黒い、怒張した顔があつた。いつのまにやつて来たのだらう、徳次はぎゆつと片手で押へつけられたまゝだつた。そして、房一の怒声を聞いた。